頭のかたち外来(ヘルメット治療)
頭のかたち外来とは
赤ちゃんの頭の形のゆがみは、胎内での圧迫、分娩時の影響、向き癖や寝かせ方 などが原因で生じることがあります。
ほとんどの場合、成長とともに自然に改善 されますが、頭蓋早期癒合症 のように、骨の成長に影響を及ぼす疾患がある場合は、早期に診断し適切な対応を行うことが重要です。
「形のゆがみが気になる」「なかなか改善しない」と感じたら、まずはご相談ください。小児脳神経外科医の専門的な診察を通じて、お子さまの頭の成長を適切に見守り、必要に応じたアドバイスや治療をご提案いたします。
それでも改善が難しい場合は、ヘルメット治療を検討します。特に生後6ヶ月を過ぎると治療の効果が限定的になるため、早めの受診をおすすめします。
頭のかたちのゆがみについて
赤ちゃんの頭の形が気になる方は多いかと思います。
特に、「斜頭症」「短頭症(絶壁頭)」「長頭症」といったゆがみがある場合、「このままで大丈夫?」と心配されることも少なくありません。
頭の形のゆがみには、大きく分けて「位置的頭蓋変形」と「頭蓋骨早期癒合症」の2種類があります。
見た目が似ていることもありますが、原因や治療法が大きく異なります。
特に、「頭蓋骨早期癒合症」は放置すると脳の発育に影響を及ぼす可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。
位置的頭蓋変形
「位置的頭蓋変形」は、赤ちゃんの寝る向きや姿勢の癖によって生じる頭の形のゆがみです。
例えば、ずっと同じ向きで寝ていると、片側が平らになってしまう斜頭症が起こることがあります。また、仰向けの時間が長いと、後頭部が平らになる短頭症(絶壁頭)が見られます。
これらの変形は、体位変換(向きを変えて寝かせる)やヘルメット治療によって改善が期待できます。
また、成長とともに目立たなくなることもあります。
頭蓋骨早期癒合症
頭蓋骨早期癒合症とは、赤ちゃんの頭の骨のつなぎ目(縫合)が通常より早く閉じてしまう病気です。縫合が早期に閉じることで、脳の発育スペースが制限され、頭の形に特有の変形が生じます。
例えば、矢状縫合が早く閉じると、頭が前後に長く細い形になる「病的な長頭症」が見られます。
この病気は自然に改善することはなく、放置すると脳の発育に影響を及ぼす可能性があります。 そのため、早期診断と適切な治療が重要です。通常、生後3〜6か月までに診断し、外科手術を行うことで、正常な頭の成長を促すことができます。
「位置的頭蓋変形」と「頭蓋骨早期癒合症」の違い
位置的頭蓋変形 | 頭蓋骨早期癒合症 | |
---|---|---|
原因 | 向き癖、寝る姿勢、抱っこの仕方など環境要因 | 頭の骨のつなぎ目(縫合)が生まれつき早く閉じる |
種類 | 斜頭症・短頭症(絶壁頭)・長頭症 | 矢状縫合早期癒合・冠状縫合早期癒合など |
頭のゆがみの特徴 | ゆっくり成長とともに変化することが多い | 頭の形の変化が一定で、自然に改善しない |
脳への影響 | なし(見た目の問題) | あり(放置すると脳の発育に影響が出る可能性) |
治療法 | 理学療法(姿勢の調整、体位変換指導)、ヘルメット治療 | 早期診断が必要。外科手術を検討 |
Point
似ているからこそ、見逃さないことが大切
「位置的頭蓋変形」と「頭蓋骨早期癒合症」は、見た目が似ていることがあるため、専門的な診察が必要です。特に、「位置的頭蓋変形」と思っていたけれど、実は「頭蓋骨早期癒合症」だったというケースもあります。
早期発見・早期治療がとても大切です。
赤ちゃんの頭の形が気になる場合は、自己判断せず、早めに専門医にご相談ください。もし頭蓋骨早期癒合症が疑われた場合は、都立小児医療センターの小児脳神経外科で精査していただきます。
頭のゆがみに対する当院の治療
当院では、頭のゆがみに対して以下二つの方法を用いることがあります。
理学療法 〜早期治療の重要性〜
理学療法とは、赤ちゃんの発達をサポートするための専門的なケアです。具体的には、体位変換の指導や向き癖の改善を目的としたエクササイズを行い、頭の形が整うよう促します。
適切なケアを行うことで、ヘルメット治療を回避できる場合もあります。
当院では、生後まもない時期から理学療法を指導し、赤ちゃんの自然な成長をサポートしています。特に、生後6か月頃までに腹ばい(タミータイム)の機会を取り入れることが効果的です。
保護者の胸の上や固めのマットの上で腹ばいになることで、頭への圧力が分散され、ゆがみの予防につながります。
また、頭の形が気になる場合は、体の向きや寝方を工夫し、常に同じ側が下にならないよう調整することが大切です。枕などを活用し、へこんでいる側に圧がかからないようにしましょう。
重度の場合には、ヘルメット治療を検討することもあります。
ヘルメット治療の前に、できることがあります。
赤ちゃんの頭の形が気になる場合は、できるだけ早めの受診が大切です。生後1ヶ月頃にご相談いただければ、体位変換の指導や理学療法により改善が期待できます。
実際に、飯野病院で出生された赤ちゃんに、生後まもない頃から理学療法を指導することで、ヘルメット治療を回避できるケースが多くあります。生後の成長とともに自然に改善することもありますが、適切なケアを早期から行うことで、より良い経過が期待できます。
ヘルメット治療
ヘルメット治療は、赤ちゃん専用の矯正ヘルメットを装着し、成長に合わせて頭の形を整える治療法です。より効果的な矯正を行うため、生後3〜4か月での開始を推奨しています。
当院のヘルメット治療について
飯野病院では、400例を超えるヘルメット治療の実績があります。
赤ちゃんの頭の形の歪みが理学療法だけでは改善しにくい場合や、成長とともに矯正が難しくなる場合は、ヘルメット治療を検討します。
早期治療のメリット
治療を早く始めるほど、矯正がスムーズに進み、治療期間が短縮される可能性があります。 通常の治療期間は平均3〜4か月ですが、開始が早いほど短期間での改善が期待できます。
赤ちゃんの頭の形が気になる場合は、できるだけ早めにご相談ください。
ヘルメット治療の適応基準(クラス分類)
- クラス1: 軽度の後頭部扁平のみ
- クラス2: 耳の位置に左右差あり
- クラス3: 額の突出を伴う
- クラス4: 眼窩骨・頬部・下顎骨にも変形を認める
ヘルメット治療の仕組み
1日23時間の装着を2〜6ヶ月間継続
頭の平らな部分にスペースを作り、自然な成長を促す
ヘルメット治療は、赤ちゃんの自然な成長を活かした矯正治療です。
適切な時期に開始することで、より良い効果が期待できます。
当院のヘルメット治療のながれ
1. 小児科一般外来で3Dカメラで計測
2. 小児脳神経外科医の診察
※小児脳神経外科医の診察により、都立小児医療センターでの精密検査をご案内することがあります
3. ヘルメット作成後は小児科一般外来で診察と3Dカメラで経過観察
4. 最後に小児脳神経外科医の診察で卒業
費用
「頭のかたち外来」の初診費用はゆがみの原因の診断を「保険診療」として行うため、自己負担はありません。
※他県の方は窓口で精算後、自治体へ申請することで、後日全額が払い戻されます。
診断の結果、ヘルメット治療が必要と判断された場合、「保険適用外」のため費用は自己負担となります。
ヘルメット治療に関わる費用
料金 | 注意事項 | |
---|---|---|
ヘルメット治療 料金 | 38万円(税込) | 3Dカメラ撮影費込み(治療前および治療開始後の評価のための撮影) |
3Dカメラ撮影(ヘルメット治療前) | 初回 10,000
円(税込
) 2回目以降 5,000円(税込 ) |
ヘルメット治療を開始する場合は、ヘルメット治療料金から3Dカメラ撮影(初回分)の料金を減額します。 |
3Dカメラ撮影(ヘルメット治療後) | 月1回まで無料(ヘルメット治療終了まで) |
受診の流れ
① 初診
お電話(042-483-8811)にて、【小児科一般外来(平日)】のご予約をお取りください。
(電話受付時間:月・火・水・金・土 9:00〜17:00)
② 再診:頭のかたち外来(小児脳神経外科医の診察)
初診時に、次回の「頭のかたち外来」の予約をお取りいたします。
外来日:第1・3金曜日の午後
※学会等の都合により変更となる場合があります。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。