経口中絶薬
予期せぬ妊娠や、さまざまな事情による妊娠に悩まれる女性は少なくありません。避妊がうまくいかなかった場合や、思いがけない状況での妊娠など、さまざまなケースが考えられます。
日本では長らく外科的処置のみが選択肢でしたが、身体的・精神的な負担が大きく、不安を感じる方も少なくありません。そこで、日本でも2023年に経口中絶薬が承認されました。世界保健機関(WHO)が推奨する安全で有効な中絶方法であり、海外では30年以上前から広く使用され、外科的処置に代わる選択肢として確立されています。
当院では、より多くの選択肢を提供するため、内服薬による人工妊娠中絶を導入しています。経口中絶薬の特徴や服用方法、メリット・デメリットについて詳しくご説明しておりますので、検討されている方はぜひご参考ください。
経口中絶薬とは
経口中絶薬とは、人工妊娠中絶を目的としたお薬で、世界保健機関(WHO)も推奨する方法の一つです。
望まない妊娠には人工妊娠中絶という選択肢がありますが、日本では外科的処置をイメージする方が多いかもしれません。しかし、外科的処置は身体的・精神的負担が大きく、不安を感じる方も少なくありません。
その負担を軽減するため、2023年に日本で経口中絶薬が承認されました。妊娠初期(9週0日まで)に使用でき、2種類の薬を順番に服用します。1つ目の薬で妊娠の継続を止め、2つ目の薬で子宮を収縮させ、体内の内容物を排出します。
経口中絶薬は「アフターピル」と混同されることがありますが、目的が異なります。
アフターピルは、妊娠を防ぐ緊急避妊薬で、性行為後72時間以内に服用すると避妊効果が期待できます。特に24時間以内の服用で80〜95%の避妊効果があるとされますが、確実ではありません。
一方、経口中絶薬は妊娠が成立した後に中絶するための薬です。両者の違いについては、以下の表をご参考ください。
〈経口中絶薬とアフターピルの違い〉
経口中絶薬 | アフターピル | |
---|---|---|
目的 | 妊娠確定後に服用する中絶薬 | 性行為後に妊娠を避けるために服用する避妊薬 |
処方が可能な場所 | 母体保護法指定医が在籍している医療機関で、入院が可能な有床施設 | 産婦人科などの医療機関 |
処方薬 | メフィーゴパック | ノルレボ錠 |
適用 | 妊娠9週0日まで | 性行為後72時間以内 |
副作用 | 大量の出血・腹痛・嘔吐・倦怠感などが生じる可能性がある | 嘔吐や倦怠感が生じる可能性がある |
費用 | 10〜15万円程度 | 1万円程度 |
経口中絶薬の飲み方
経口中絶薬は、世界保健機関(WHO)が推奨する安全で有効な中絶方法で、海外では30年以上前から広く使用されている薬剤です。欧米を中心に多くの国で導入され、外科的処置に代わる選択肢として確立されています。
日本では2023年4月に初めて承認されましたが、使用できるのは母体保護法指定医のもとに限られます。ドラッグストアでは購入できず、通販や個人輸入は健康被害や法的リスクを伴います。必ず医療機関で診察を受け、適切な処方を受けてください。
経口中絶薬の飲み方
経口中絶薬の服用は通院でも入院でも処置を受けられます。
ただし、中絶処置が完了するまで2〜3日の日数を要するため、その間医師による経過観察が必要です。
経口中絶薬の飲み方は以下のとおりです。
- ミフェプリストン錠を1錠服用する
- 36〜48時間経過するまで待機する
- ミソプロストール錠4錠を口腔粘膜から30分かけて吸収させる
厚生労働省によると、ミソプロストールを服用後の24時間までに中絶が成功した割合は93.3%という結果が出ています。
また、経口中絶薬を服用後に下腹部の痛みや嘔吐などの副作用が発生した割合は57.5%で、重度の子宮出血など重篤な副作用が発生した割合は0.8%です。
経口中絶薬を用いて中絶するケースも、ご自身の同意書だけでなくパートナーの同意書・サインが必要になります。
未成年の方は、保護者の同意書とサインも必要です。
経口中絶薬と人工妊娠中絶の比較
人工妊娠中絶を検討する際に中絶方法で迷われる方が多くいらっしゃいます。
ここでは、日本で従来から行われている掻爬法(そうは)法、WHOが推奨している中絶方法で、手術の手動真空吸引法(MVA)、経口中絶薬を比較します。

〈人工妊娠中絶法の種類と特徴〉
方法 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
掻爬法 | 鉄の器具を子宮の中に入れて子宮内を掻き出す方法。 日本では昔から導入されている方法で、現在も妊娠11週まで掻爬法による手術が行われることが多い。 |
・子宮内の状態を把握しやすい ・多くのクリニックで行われている ・他の方法に比べて安価 |
・子宮内が傷つく恐れがある |
手動真空吸引法(MVA) | MVA(手動真空吸引法)は、子宮口を拡張後、細いプラスチック管(カニューレ)を子宮内に挿入し、手動吸引器を用いて内容物を除去する方法です。局所麻酔下で行われ、比較的短時間で処置が完了します。 | ・掻爬法より子宮を傷つけるリスクが低い
・手術時間が短く、回復が早い ・WHOが推奨する安全性の高い方法 ・器具を使い回さないので、掻爬法と比較して感染のリスクが低い |
・子宮内に遺残を残してしまう可能性がある |
経口中絶薬 | 経口中絶薬を2種類服用して人工妊娠中絶を行う方法。 1種類目の薬で妊娠の継続を中断し、2種類目の薬で子宮収縮を起こして子宮外に排出する方法。 |
・心身の負担が少ない ・外科処置を受けなくてよい ・条件を満たせば入院の必要がない ・外科処置や麻酔に伴う合併症がない |
・妊娠9週0日までしか適用されない ・中絶が完了するまで2〜3日かかる 7〜8%の失敗率がある |
〈外科処置による中絶と経口中絶薬による中絶の違い〉
掻爬法 | 手動真空吸引法(MVA) | 経口中絶薬 | |
---|---|---|---|
中絶方法 | 金属の器具を子宮内に挿入し、胎嚢を掻き出して除去する方法 | 専用の吸引器を子宮内に挿入し、陰圧を利用して胎嚢を吸い出す方法 | 2種類の経口中絶薬を服用し、胎嚢を排出する方法 |
適用 | 妊娠12週6日まで(10週以降は対応できない場合があります) | 妊娠12週6日まで | 妊娠9週0日まで |
かかる時間 | 30分以内 | 30分以内 | 1日〜数日間 |
入院の有無 | 入院の必要がなく、日帰りで行われることがほとんど | 入院の必要がなく、日帰りで行われることがほとんど | 入院が可能な有床施設での処置(入院が必要な場合と帰宅が可能な場合がある) |
成功率 | 99% | 99% | 93% |
副作用 | 手術後に少量の出血が出たり、麻酔による吐き気などが出たりすることがある | 手術後に少量の出血が出たり、麻酔による吐き気などが出たりすることがある(掻爬法より子宮内の損傷リスクが低い) | 大量の出血・腹痛・嘔吐・倦怠感などが生じる可能性がある |
WHOの推奨 | WHOでは推奨されない方法 | WHOで推奨されている方法 | WHOで推奨されている方法 |
合併症 | 麻酔薬を伴う合併症が発症する場合があります。 | 麻酔薬を伴う合併症が発症する場合があります。 | 麻酔を使用しないので、麻酔薬による合併症は発症しない。(追加手術をしない場合) |
当院では経口中絶薬を取り扱いしております
当院では経口中絶薬を取り扱っていますので、内服薬処置による中絶が可能です。
日本で2023年に経口中絶薬が承認されたものの、日本国内ではまだまだ外科処置による人工中絶が主流となっています。
そのため経口中絶薬による中絶に不安を抱いている方も少なくありません。
しかし、経口中絶薬の服用による中絶は30年以上も前に普及されており、先進国を中心に活用されている方法です。
WHOでも安全な中絶方法として必須医薬品に指定されています。
Point
- 週末でも24時間、緊急外来で対応可能
- 京王線「調布駅」東口徒歩0分の好立地で、緊急時の受診がしやすく、自宅での経過観察にも適している
- 費用には内服薬のほかに追加処置費用を含むので、予想外の追加費用も発生しない
費用
妊娠週数 | 総額 |
---|---|
7週6日まで | 11万円(税込) |
8週0日から9週0日 | 12.5万円(税込) |
経口中絶薬代・服薬指導代・処置代・追加手術代 (※1)・鎮痛薬代・術後診察代を含みます
※1 2剤目内服後24時間以上経過しても胎嚢が排出されない場合、追加手術(掻爬術)が必要になります。
追加手術(掻爬術)代は初期費用に含むため、かかりません。
※ 妊娠週数は、初回診察時の超音波検査による評価で決定します。
帰宅での経過観察をご希望の方へ
当院での経口中絶薬を希望される方で、自宅での経過観察を希望される方は、以下は自治体に居住地があることが必要です。
<東京都> 調布市、狛江市、三鷹市、府中市、武蔵野市、小金井市、稲城市、多摩市、世田谷区、杉並区
<神奈川県> 川崎市多摩区
【帰宅条件の注意事項】
「ミフェプリストン及びミソプロストール製剤の使用にあたっての 留意事項について(依頼)」の一部改正についてミソプロストールを投与された者の帰宅の許可は、本剤の投与を受ける者が自宅での経過観察を希望し、当該者の居住地が以下の(1)及び(2)の全ての要件 を満たす場合に限る。
医療機関においては、本剤の投 与を希望する者の居住地及び緊急時の来院方法等の 確認を確実に実施すること。
(1)当該医療機関に容易に通院可能(当該医療機関を起点として半径 16 キロメートルの区域内)
(2)当該医療機関が所在する二次医療圏又は周産期医療圏内
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/001342228.pdf
上記以外の費用(税込)
- 初診料:4,400円 /超音波検査料 2,200円
- 術前検査:6,600円
-
2剤目内服後に婦人科専用病床での入院管理を希望される方は、以下の追加費用がかかります。
・日帰り入院 +1万円
・1泊入院 +2万円 -
週末割り増し費用(希望者)
【1剤目:木曜 夜、2剤目:土曜 朝】を希望される方は、+3万円の追加費用がかかります。 -
2回目以降の術後診察
子宮内に遺残がないことを確認する術後診察は通常1回で終了となりますが、2回目以降の診察が必要になった場合は別途費用がかかります。(診察、処置内容により金額は異なります)
受診回数の目安と診療内容
①初診日 | 【母体保護法指定医師による診察と相談】 ※ 妊娠中絶を希望された場合、以下が必要となります。 ①術前検査 ②「経口中絶薬を用いた妊娠中絶同意書」の説明とお渡し ③日程の予約 ④費用の支払い(初診料+超音波検査料+術前検査 総額13,200円) |
②2回目 | 【経口中絶薬1剤目を指定医師の面前で内服】 ※内服前に術前結果の説明と同意書の確認を行います。内服後に帰宅していただきます。 ※内服前に経口中絶薬費用のお支払いいただきます。 |
③3回目 | 【経口中絶薬2剤目を指定医師の面前で内服】 入院管理、もしくは内服後に院内で30分滞在後に帰宅していただきます。 |
④4回目 | 【術後診察】 ※ 妊娠組織の排出後に子宮内に遺残がないことを確認し、終診となります。 |
受診方法
人工妊娠中絶の予約は、WEB予約もしくは電話で受け付けています。
Web予約(アットリンク)からのご予約では、以下の手順でご予約をお取りください。
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